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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)2466号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実<省略>

理由

一、<略>

二、そこで、まず、中島式圧扁機が本件登録実用新案の権利範囲に属するかどうかについて検討する。

本件登録実用新案公報によると、その考案の性質、作用及び効果の要領の項に、本件登録実用新案の作用効果に関し、「之を要するに、この考案は螺旋状に配設した帯鉄状翼片5の扁平面に糠又は穀類或は粉末等が掻き寄せられつつ攪拌移送せしめられるので、穀類等に何らの衝撃作用を与へない。従つて、衝撃作用を与へる従来のものに比すれば穀類を損傷しない。」「加之、帯鉄状翼片5は螺旋状に配設し、且その両端を(廻転軸6に設けた)枠片7の周側に装着したから、攪拌面が拡大し、全体を平均に攪拌移送しうる効果がある。」(句読点補充)との各記載があり、またその添付図面の記載によると、廻転軸の中間には帯鉄状翼片を支持する枠片または支持杆の記載がないことを認めることができる。

また、<書証>によると、本件登録実用新案の出願手続の経過に関し次の(1)から(3)までの事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

(1)  本件登録実用新案は、当初、「帯鉄状の翼片を螺旋状に配設し之を加熱筒内に廻転自在に装備してなる糠又は穀類の乾燥機の構造」を登録請求の範囲として出願された。もつとも、その説明書添付の図面は原判決添付の別紙第一目録(本件登録実用新案の出願公告掲載の実用新案公報)記載の図面と同一であつたが、同説明書の実用新案の性質作用及効果の要領の項には、その末尾に「之を要するに本考案においては帯鉄状螺旋翼の扁平面に掻き寄せられつつ糠又は穀類或は粉末等は攪拌移送せしむるを得べく従つて穀類等に衝撃作用を与える従来のものに比すれば穀類等を破損せしむることなく攪拌移送せしめ得べし」との記載はあつたものの、帯鉄状螺旋翼の装着の部位等については全く記載がなかつた。

(2)  ところが、審査官から、この出願の実用新案は出願前に国内に頒布された昭和一三年実用新案出願公告第一七五六二号公報に容易に実施することができる程度において記載されたものと類似であるから新規な実用新案と認めることができない旨の拒絶理由通知があつたので、控訴人は、「この考案は帯鉄状翼片は軸に定着していない即ち軸と翼片との間には穀類の移行する空間部が存在している。従つて乾燥過程において翼片の廻転に伴ない穀類は翼片の内外を移行する所に乾燥を促進する要素がある斯る作用効果を奏する構造は引用例に記載してない。」旨等を述べた意見書を提出するとともに、登録請求の範囲を「図面に示す如く数条の帯鉄状の翼片を螺旋状に配設しその両端を廻転軸5に設けた枠片7の周縁に装着してなるリボンコンベヤーを加熱筒内に廻転自在に装備してなる糠又は穀類の乾燥機の構造」と訂正した。

(3)  これに対し、特許庁長官は、控訴人に対し、「登録請求の範囲記載第一行の『数条の帯鉄状の翼片を螺旋状に配設し、その両端を廻転軸5に設けた枠片7の周縁に装着してなる』迄の作用効果を説明書中に今一度具体的に詳記されたい。」旨を命じた。そこで、控訴人は訂正説明書を提出し、とくに当初の願書添付の説明書における図面の説明に関する「図中(1)は加熱室(2)を有する横型加熱二重筒、(3)は両側の機枠、(4)は帯鉄状の翼片(5)を螺旋状に配設してなる移送機、(6)は廻転軸、(7)はその枠片とす」とあつた個所を「図中(1)は加熱室(2)を有する横型加熱二重筒、(3)は両側の機枠、(4)は数個の帯鉄状翼片(5)を螺旋状に配設しその両端を廻転軸(6)に設けた枠片(7)の周縁に装着してなる攪拌移送翼である」と改め、且、作用効果の記載に「加之帯鉄状の翼片(5)は螺旋状に配設し且その両端を枠片(7)の周側に装着したから攪拌面が拡大し全体を平均に攪拌移送し得る効果がある」との記載を追加した。その結果、本件登録実用新案の公告がなされるに至つた。

以上認定の諸事実に、前掲当事者間に争いのない本件登録実用新案の構成要件及び作用効果を対照して考察すると、廻転軸の中間に帯鉄状翼片の支持杆が存するときは、穀類等の攪拌移送の妨げとなり、穀類等に衝撃を与えてこれを損傷することが明らかであるから、本件登録実用新案にあつては、廻転軸の中間の位置に帯鉄状の翼片の支持杆を設置することを予定していないものであり、「穀類に衝撃作用を与えず」かつ「攪拌面が拡大し全体を平均に攪拌移送しうる」という本件登録実用新案の作用効果は、いずれも、帯鉄状翼片の両端を廻転軸に設けた枠片の周縁に装着するという構成により最もよく奏せられるものであると認めるのが相当である。換言すれば、本件登録実用新案の前示構成要件のうち「(帯鉄状翼片)の両端を廻転軸6に設けた枠片7の周縁に装着し」とは「帯鉄状翼片の両端を廻転軸6に設けた枠片7の周縁にのみ装置し、その他の位置において帯鉄状翼片を廻転軸に装着しない」構造を意味するものであり、この要件は本件登録実用新案において構造上の主要な特徴とみるべきものである。

一方、中島式圧扁機について、前掲当事者間に争いのないその構造に別紙第二目録の説明書及び図面を対照して検討すると、中島式圧扁機は、加熱筒内に帯鉄状翼片を螺旋状に配設し、右帯鉄状翼片を廻転軸に設けた支持杆に装着し、廻転軸は加熱筒内に廻転自在に装備されている点において、本件登録実用新案と軌を一にするものであるが、右支持杆が、いずれの型にあつても、廻転軸の中間の数か所に設けられ、したがつて、帯鉄状翼片もその両端以外の中間の数か所で支持杆に固着されていることが認められ、右支持杆が、廻転軸の両端以外の中間の数か所に存在することにより、穀類等の移送に抵抗して衝撃を与え、かつ帯鉄状翼片の攪拌移送面を縮少する結果を招来していることが明らかである。

以上認定の事実によると、中島式圧扁機は、本件登録実用新案の構造上の主要な特徴である「帯鉄状翼片の両端を廻転軸に設けた枠片の周縁に装着した構造」を具備していないことが明らかであり、したがつて、また、右の点で構成を異にすることにより、本件登録実用新案の右構造上の特徴に由来する前記作用効果の点においても、差異のあるものであることが明らかであるから、その他の点の構成において軌を一にするところがあつても、中島式圧扁機をもつて本件登録実用新案の単なる設計変更とみることも相当ではない、といわざるをえない。

叙上のとおりであるから、中島式圧扁機は本件登録実用新案の技術的範囲に属しないものというべきであり、これと見解を異にする原審鑑定人Sの鑑定の結果及び<書証>(判定書謄本)の記載は、いずれも採用することができず、他に叙上の認定を動かすに足る証拠もない。

三、以上のとおりであるから、中島式圧扁機が本件登録実用新案の技術的範囲に属することを前提とする控訴人の本訴請求は、進んでその余の点について判断するまでもなく、理由がないものであり、これと同趣旨の原判決は、結局正当である。

よつて、本件控訴を失当として棄却する。(服部高顕 石沢健 滝川叡一)

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